この記事でわかること
・スポット選択で最優先される判断軸と、ゲストのリクエストが「下位」である理由
・出航前・移動中・現地到着後、3段階で行う海況確認の実際
・ゲストには見えていない「水面下の判断」—アントニガウディで他ショップを待つ理由
「今日はなぜこのスポットなんだろう?」「リクエストしたスポットに行けない日があるのはなぜ?」ーダイビング後にそんな疑問を持ったことはありませんか?
ガイドがスポットを選ぶ判断には、ゲストには見えていない複数の要素が複雑に絡み合っています。この記事では、ガイド歴30年のサンアイランド竹内がスポット選択の判断軸を完全に公開します。「なぜそこに潜るのか」を知ることで、宮古島ダイビングの楽しみ方がさらに深まります。
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スポット選択の最優先判断軸は「風向・風速・波の高さ」
結論から言います。スポット選択で最優先される要素は「風向・風速・波の高さ」の3つです。
この3要素だけで、潜れるエリアの8割が決まります。ゲストのリクエスト・スポットの景観・水底の形状、これらは判断軸としては下位に位置します。
「リクエストしたスポットに行けなかった」という経験をされた方がいるとすれば、それはほぼ確実にこの3要素が理由です。ゲストのご希望を軽視しているのではなく、安全に潜れる環境が整っていないと判断したからです。
ワタシが大切にしているのは「安全管理が楽しさより上」という考え方ではなく、「安全があって初めて楽しさが生まれる」という考え方です。安全を犠牲にして楽しさを追うことは、サンアイランドでは絶対にしません。

3段階で行う海況確認—出航前・移動中・現地到着後
スポット選択は一度で完結するものではありません。当日の朝から帰港まで、3つのタイミングで段階的に確認と判断を重ねています。
①出航前—気象サイトで情報を収集する
朝一番に気象サイトで天気図・宮古島の風速・風向・波の高さ・潮位を確認します。これで出航の可否を判断し、潜れる可能性が高いダイビングスポットをあらかじめ予測しておきます。
ただし、この段階はあくまで「予測」です。宮古島の海況は変わりやすく、朝の情報がそのまま現地に当てはまるとは限りません。
②移動中—船上から海況を読む
出航後、伊良部島・下地島エリアへ向かう移動中も、ずっと海況を観察し続けます。船の揺れ・波の立ち方・風の強さなど、これらをリアルタイムで読みながら、どのスポットに向かうかを絞り込んでいきます。
③現地到着後—最終判断をする
スポット周辺に到着したら、波の高さ・うねり・潮流の有無を実際に見て最終判断を下します。朝の予測と異なる状況になっていることも珍しくありません。
「このスポットで潜れる」という確信が持てて初めて、ブリーフィングに入ります。現地に来てから「やっぱり別のスポットに変更します」という判断は、ゲストにとっては突然のことに見えるかもしれませんが、それが現場での安全管理の実態です。
ゲストのスキルを見てスポットを変える
海況がクリアできたとしても、もうひとつの判断軸があります。それがゲストのスキル評価です。
事前に経験本数・ライセンスランク・最終ダイビング日を確認していますが、実際にどの程度のスキルか・ガス消費量はどうかは、潜ってみるまでわからない部分があります。緊張・体調・久しぶりのダイビングによる感覚の鈍りも現場で初めてわかることです。
そのため初日の1本目は、比較的水深が浅く、オーバーヘッド環境でもリスクが少ないスポットを選びながら様子を見ます。
潜り始めてから「圧平衡に時間がかかる」「中性浮力が取れずバランスが不安定」「ウエイトが重くフィンキックをやめると沈んでしまう」といった状況が見えた場合は、当初予定していたオーバーヘッド環境への案内を取りやめます。その代わり、フィッシュウオッチングをメインにしたり、水慣れとスキル確認にあてたりして、2本目・3本目のダイビングに向けたサポートに切り替えます。
「行けると思っていたスポットに行けなかった」ではなく「その日のベストな潜り方を選んだ」それがワタシの判断の軸です。

複数日参加のゲストへのスポット組み立て方
2泊3日・3泊4日など複数日ご参加の場合、スポットの組み立てには以下の視点が加わります。
同一スポットの重複を避ける 滞在期間中、同じスポットに2度ご案内しないよう、複数日分のスポットを事前に組み立てます。宮古島の地形スポットは多様なので、毎日異なる景観をお届けできます。
類似した景観が連続しないようにする 3本のダイビングが似たような印象にならないよう、縦穴・横穴・洞窟・ドロップオフなど、異なる地形のバリエーションを意識して組み合わせます。
ダイブプロフィールのリスク管理 3本目に水深30mを超えるダイビングは行いません。深度の急な増減(ヨーヨーダイビング)も避けます。シングルバックマウントで最大水深40mを超えるダイビングも行いません。これらはすべて、減圧症リスクを最小化するための判断です。
ゲストには見えていない「水面下の判断」
最後に、現場でのガイドの判断をリアルに伝えるエピソードをお話しします。
アントニガウディは宮古島を代表する三大地形スポットのひとつで、コンディションが良い日には複数のショップが同時に向かうことがあります。タイミングによっては5ショップが同日に潜ることも珍しくありません。
このスポットは係留場所から沖へ30〜40m先に棚があり、水深20mから37mのドロップオフにかけて、高さ・幅とも15mほどの吹き抜けたホールが広がります。内部から見上げると、棚の上から側面にかけて青が映える5つの穴の造形を楽しめます。
ただし最大水深は30mを超えるため、減圧不要限界時間とガス消費の制限があり、長く留まることはできません。
だからこそ、他ショップがホール内に侵入しようとしているとき、ワタシは敢えて水深10mの中層で待ちます。他ショップがホールから出たのを確認してからホール内へ入ることで、ガスを温存したまま減圧不要限界にも十分な余裕を持って、じっくりと造形を楽しんでいただける時間を確保できるのです。

ゲストから見れば「なぜ中層で止まっているのだろう」と感じる瞬間かもしれません。でも、その「待つ」という判断が、造形をじっくり楽しむための時間を生み出しています。
視野を広く周りを見渡し、スポットの特徴と見所を知っているからこそできる「間の取り方」と「ゲストのコントロール」これがプロのガイドの仕事です。
宮古島ダイビングスポット一覧では各スポットの特徴も紹介しています。また地形ダイビングの魅力もあわせてご覧ください。
まとめ
【最優先の判断軸】風向・風速・波の高さの3要素でエリアの8割が決まります。ゲストのリクエストや景観は重要ですが、安全が担保された上での話です。
【3段階の海況確認】出航前の気象確認・移動中のリアルタイム観察・現地到着後の最終判断—この3段階を経て初めてスポットが確定します。
【ゲストのスキル評価】初日1本目は必ず様子を見ながら潜ります。スキルに不安を感じた場合は、当初予定のスポットを変更することを迷いません。
【水面下の判断】「中層で待つ」「他ショップをやり過ごす」ーゲストには見えていない判断が、造形をじっくり楽しむための時間を作っています。
🤿 ガイドの一言
スポット選択に「ゲストのリクエスト通り」は最優先ではないと言うと、驚かれる方もいます。でも、潜れない状況で無理に行って事故が起きることの方が、ワタシにとっては絶対にあってはならないことです。「今日はこのスポットじゃなくてすみません」と言う日もあります。でもその判断の裏には、必ずゲストさんの安全と、その日のベストな体験を届けたいという気持ちがあります。それだけは、30年間変わっていません。
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