この記事でわかること
・なぜ耳が抜けないのか、その仕組みと「できない人ほどやりがちなミス」
・現場で30年使い続けているワタシの耳抜き3つのポイントと、バルサルバ以外の代替法
・「耳抜きが苦手だから宮古島の地形は無理」が早とちりである理由
「耳抜きがうまくできなくて…」という言葉を、ワタシはこれまで何百回と聞いてきました。
体験ダイビングで初めて海に入る方から、ライセンスを持っているのに毎回苦労しているダイバーまで、悩んでいる方は想像以上に多いのです。だからといって「あなたはダイビングに向いていない」なんてことには、まったくなりません。やるべきことを知っているかどうか、丁寧な順番が合っているかどうか、それだけの違いがほとんどです。ガイド歴30年、潜水本数10,000本以上のワタシ・竹内が、現場で実際に効いてきた方法を正直にお伝えします。
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そもそも、なぜ耳が痛くなるのか―仕組みから理解する
水中では、1m潜るごとに約0.1気圧ずつ水圧が増します。この圧力が鼓膜の外側にかかり、耳の内部にある「中耳腔」という空間を圧迫します。圧平衡とは、肺からのの空気を利用し、中耳腔の圧力を外の圧力と均等にすること。そして耳抜きはその圧平衡の手段の一つです。
うまくいかないと、耳の奥がじわじわと痛みはじめ、頭痛のような不快感が広がります。無理して潜り続けると鼓膜にダメージを与えることもあるため、痛みを感じたら迷わず浮上するのが鉄則です。
「できない人」に共通するミスが一つあります。それは「痛くなってから抜こうとすること」です。すでに圧が強くかかった状態で耳管を開けようとしても、なかなか開きません。そこで力んでしまい、さらに耳管を傷めてしまう、という悪循環が生まれます。耳抜きは「痛くなってからするもの」ではなく、「痛くなる前にするもの」です。この認識の違いだけで、ダイビング体験が大きく変わります。
①先手で抜く―痛みを感じる前に、水深1〜2mから始める

耳抜きは「痛みが出たらやる」ではなく、「水に入った直後から継続してやる」ものです。
エントリーして水面下1〜2mの段階から、潜降ロープをしっかり握り、身体のバランスを安定させた状態で鼻をつまんで軽く圧をかける動作を繰り返しながら、少しずつ深度を下げていきます。この段階では耳への圧がまだ小さいため、ほんの少しの力でスッと抜けることがほとんどです。
宮古島の地形スポットは水深10〜30m前後が中心です。最初の数メートルでこの習慣をつけておくと、後半の深度でも耳への負担なく潜り続けられます。逆に最初をおろそかにすると、水深が深くなるほど抜けにくくなり、焦りが生まれます。焦りは呼吸を乱し、さらに耳が抜けにくくなる、という連鎖に入ってしまいます。
昨日潜った海況よりも今日の方が少しうねりがある、といった環境の変化がある日こそ、ロープを使って自分のペースでゆっくりと「先手で抜く」ことが、パニックを防ぐ最大の防衛策になります。浮上してから「あの地形をもっとゆっくり見たかった」と思う理由のひとつが、耳抜きに手間取って気持ちの余裕をなくすことです。先手で抜く習慣は、宮古島の地形を存分に楽しむための土台でもあります。
② バルサルバ法だけに頼らない―2つの代替法を試す
耳抜きといえば「鼻をつまんで鼻から空気を送り込む(バルサルバ法)」が有名ですが、これが唯一の正解ではありません。力んで送り込む動作が耳管に過剰な圧をかけ、かえって逆効果になることもあります。一般的なガイドの視点ではバルサルバ法だけを教えがちですが、サンアイランドではゲストの緊張度合いに合わせて複数の選択肢を提案しています。
ワタシが体験ダイビングのゲストによく紹介しているのが「トインビー法」です。鼻をつまんだ状態でゴクンと唾液を飲み込む動作で、耳管をやさしく開きます。力ずくに頼らず自然にできるため、緊張しているときでも試しやすい方法です。
もうひとつは「フレンツェル法」で、鼻をつまんだまま喉の奥を「ん」と閉めるような動作をします。横隔膜を使わずに耳管を開けるため、バルサルバ法より耳への負担が少ないとされています。慣れるまでに少し練習が必要ですが、陸の上でもできる練習なので、宮古島に来る前に試してみてください。
バルサルバ法:広く知られる基本の方法。浅い水深での微調整におすすめ。
トインビー法:力まずやさしく開ける。緊張しているときや初心者におすすめ。
フレンツェル法:耳管への負担が少ない。深度が深めのときや経験者におすすめ。
自分に合う方法がわかると、「耳が抜けない」という恐怖心が、一気に「これならできる」という安心感へと変わることがあります。
③ 当日の鼻の通りを確認する―コンディション管理が意外と大きい
風邪や鼻炎、花粉症などで鼻がつまっている日は、耳管の通りが悪くなります。「少しくらい鼻がずるずるする程度なら大丈夫」と潜って、いつも以上に耳が抜けず痛い思いをしたというケースを、ワタシは現場で何度も見てきました。過去の自分自身の経験を振り返っても、体調の小さな変化が耳抜きに直結するのは間違いありません。
鼻炎の薬を服用している方は、薬が効いている時間帯は問題なく潜れることが多いですが、効果が切れるタイミングに注意が必要です。特に2本目・3本目のダイビングで薬の効果が薄れ、急に耳が抜けにくくなるリバースブロックなどのリスクがあります。
当日、鼻の通りが悪いと感じたら、ガイドに正直に伝えてください。無理して深いスポットへ連れていくよりも、浅めのポイントで様子を見ながら進めるほうが、1日を通して気持ちよく潜れます。遠慮する必要はまったくありません。ワタシにとってゲストの当日の状態を正確に把握することは、安全管理の基本中の基本です。
「耳が苦手だから宮古島の地形は無理」は早とちりです
宮古島の地形スポットというと、水深20〜30mのイメージを持つ方が非常に多いです。たしかに三大地形スポット(アントニガウディ・魔王の宮殿・通り池)はそのくらいの深度が関わりますが、宮古島には水深5〜10m前後で十分に楽しめる地形スポットも複数あります。
サプライズホールや白鳥ホール、ツインホールといったスポットは最大水深10m前後。耳抜きに不安がある方でも、ゆっくりと自分のペースで下りながら、宮古島特有の青い光の差し込みを体験できます。
平均的な大人数のツアーを組むショップでは、耳抜きが遅れると「周りを待たせてしまう」というプレッシャーから焦りが生まれ、余計に耳管が閉じてしまうことがよくあります。しかしサンアイランドでは、最大6名の少人数制でガイドしているため、耳抜きに時間がかかっても、その場でしっかりと一人ひとりのペースに合わせながら進むことができます。「自分だけ遅れていて申し訳ない」という気遣いをしなくていい環境が、結果として最も耳が抜けやすいリラックスした状況をつくります。緊張が和らぐと耳管の通りも劇的に改善することを、ワタシは現場の経験から確信しています。
耳抜きに関するよくある質問(FAQ)
Q. 子供のころから耳抜きが苦手です。体質的にダイビングは無理ですか?
A. 耳管の形状や通りやすさには個人差があります。ただし「体質的に絶対無理」と断言できることはほとんどありません。方法を変えてみること、先手で抜く習慣をつけることで改善する方が多くいます。まずは体験ダイビングでプロのサポートを受けながら試してみてください。
Q. 耳が抜けない場合、その日のダイビングは中止になりますか?
A. 1本丸ごと中止にする前に、ゆっくり浮上して圧を逃がしてからもう一度試みることがほとんどです。片耳だけ抜けにくい場合、左右で少し顔の向きを変えて耳管を広げるだけで改善することもあります。ただし、鼓膜への痛みが強い場合はその日の深度を制限する安全第一の判断をします。
Q. 風邪気味でも薬を飲めば潜れますか?
A. 薬の効果時間を確認した上で、必ずガイドに状態を伝えてください。ただし発熱や強い倦怠感がある場合はダイビング自体をお勧めしません。コンディションが100%整った状態で潜ることが、地形を楽しむ上でも安全上も最善です。
Q. 耳が痛くなったとき、無理して潜り続けてはいけませんか?
A. 絶対に無理してはいけません。耳の痛みは鼓膜やその内側への圧力ダメージのサインです。痛みを感じたら潜降をストップして迷わず少し浮上し、ガイドにサインで伝えてください。無理することで鼓膜穿孔(穴が開く)や内耳を傷つけるケースもあります。
まとめ
【先手で抜く】 痛みを感じてからでは遅い。水深1〜2mの段階から継続して抜き続けることが、深度が深くなっても心の余裕を保つ最大のコツです。
【方法を選ぶ】 バルサルバ法だけが正解ではない。力まずやさしく開けるトインビー法、耳管への負担が少ないフレンツェル法を、自分の状態に合わせて使い分けてみてください。
【当日の体調管理】 鼻炎・花粉症・風邪気味の日は事前にガイドに伝える。ショップ側がスポット選びやペース配分を調整するので、正直に伝えることが1日を安全に楽しむための最善策です。
🤿 ガイドの一言 「耳が苦手なので深いところは無理です」と最初からあきらめてしまっている方に、潜る前にこの3つのポイントを伝えると、ダイビングが終わった後に「意外とできました!」と最高の笑顔を見せてくれることが本当に多いのです。できない理由を探すのではなく、どうすれば安全にできるかをゲストと一緒に考える。それがワタシのガイドの根っこにあります。耳抜きへの不安は、宮古島の美しい地形をあきらめる理由にはなりません。
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